ショートフィルム監督 日高尚人氏
アーティスト特集第三弾!今回のお相手は、数多くの映画祭で受賞を果たされている日高尚人監督。ちょっぴりブラックなユーモアも、監督の腕にかかれば”斬新”or”大胆”の一言に変わる。そんな、独特なユーモアをショートフィルムへ丁寧に盛り込む達人に、ショートフィルム制作の”いろは”や、独自のセンスを伺った。
監督の作品を観る前にも、観た後にも楽しめる二段構成!
【受賞・上映歴】
アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジアで二度のノミネート、第3回ソウル環境国際映画祭招待上映、アテネ国際短編映画祭招待上映、ドーハ・トライベッカ映画祭上映、フランスJapan Expo 2011上映、小津安二郎記念映画祭入賞、TSSショートムービーフェスティバル入賞、アストロデザインムービーコンテスト入賞、他
※日高監督作品『ミステルロココ』を視聴された方は
をクリックしてください。
―長編映画ではなく、時間的な制約の厳しいショートフィルムに取り組もうと思ったきっかけは何ですか?
もともと海外のショートフィルムやMusicVideo、CMがなんかが好きで良く見てましたし、小説なども星新一さんのように、短くテンポが良くてオチがつく作品が好きで、性格的にも向いているかなと思うんですよね。それに、ショートフィルムだからこそ想像させる部分っていうのも多いじゃないですか。そこをうまく切り取ってくるのが、クリエイティブだと思いますし、作り手として面白いです。他にも、予算に縛られにくいというメリットももちろんあります。ただ、決して長編に比べて手を抜こうという気持ちはなくて、長編を撮る時のパワーでショートフィルムを撮ろうと心掛けています。![]()
―作品を通じて、日高監督は非常にユーモアのあふれた方だと思いましたが、作品のテーマを設定する際に実践している方法論はありますか?
「こんなシチュエーションで撮りたいな」というところからスタートすることが多いですね。『キャラウェイ(※)』ではあえて、各作品のカラーを変えているんですが、「会話もの」、「女の子の一人芝居」、「PVっぽいもの」、「表情だけで魅せる、サイレントもの」のように、大半はまずシチュエーションを設定してからストーリーを作っていきました。ストーリーを考える際、この画がオチとして観たい、というのが始めに強く浮かんできます。例えば(※)、カップルを助けた人が痴漢に間違われて連れ出される(笑)、みたいな。設定したシチュエーションと、オチを結び付けてストーリーを作るという作業ですね、キャラウェイに関しては特に。
―両者を”結びつける”段階で、何か決まってすることはありますか?
相方で脚本家の雫高徳と飲みながらにしてもご飯を食べながらにしても、とにかく話しますね。幼馴染ということもあって、好きなものや笑いの感覚にしても、ツボが似ているんですよ。センスの近い人と一緒に話すと、ゴールに到達するのが速いですよね。
―アーティストの世界では特に、感覚の似た人を見つけて、相乗効果を出すことが大事なんですね。
―1本10分程度のショートフィルムの制作にはどのくらいの期間を費やしますか?
ロココ(※)については、動き出してから4か月くらいですね。ただ、最初にプロデューサーの方とお話した時にプロットは出来ちゃいましたが(笑)。
―あのとても大胆なストーリーが始めに頭にあったのですか(笑)。
大胆というか、むちゃですよね(笑)。
―ショートフィルムの制作には、テーマの脚本化、配役、演技指導、ロケーションや道具の選定、撮影、編集など様々な過程があるかと思いますが、最も大変だったのはどの過程ですか?
各パートで使う力が違っていて、それぞれ大変なんですが、労力の観点から見ると、編集段階が一番ですかね。アニメーションはアニメーターの方にお願いすることもありますが、基本的に編集はすべて自分で行っているんです。
―多彩なスキルをお持ちですね。そうした技術の習得には、映画監督をなさる前から続けていらっしゃる、webデザイン業務とも関連があるのでしょうか?
そうですね。ショートフィルムとは言っても、使うアプリは一緒だったりするんですよ。Photoshopを使ったり、Flashならちょっとしたアニメーションは作れますし、Illustratorでは劇中で登場するポスターのような小道具も作っています。今はwebでも映像を求められる時代なので、映像制作のノウハウがwebにも還元しうるということで何も無駄がないですね。
―現に、キャラウェイの後には、東京メトロのweb CM『トーキョースマイルムービー』なども制作されていますね。
この予算でこれくらいのものが撮れますよというように、具体的にクライアントに提示するサンプルとしてキャラウェイを使いましたね(笑)。
僕が作るなら、一瞬でもクスッと出来るようなCMにしたくて。もう今ではほとんど呼ばれなくなっていますが、「バイラルCM」、その一種を作りたかったんですよね。企業がyoutubeなどに動画をアップして、それをブロガーなどが自分のブログに張り付けて広めていく、という様子がバイラル(viral=ウイルス性の)で
あることからそう呼ばれてますが、これはヨーロッパを中心に流行ったマーケティング手法で、企業が大々的に宣伝することなく、いわゆる口コミ効果を利用してキーワードやメッセージを伝播させていくというものです。実際に制作したCMについてのクライアントの反応は、ターゲット層に近い若い社員の方には好評だったんですが、年配社員の方の中には「なんだこれはっ」とか、「これはウチのカラーじゃない、フザけすぎだっ」と言われたとか言われないとか(笑)(※)。
―確かに、東京メトロのイメージが身近なものに変わりましたね(笑)。
※youtubeでの視聴は以下から。
―先程、編集以外の過程もそれぞれ難しいというお話がありましたが、演出段階での難しさには何がありますか?
事前に準備万全と思っていても、撮影時に現場で急遽変更という事も多く、柔軟な対応力が必要ですね。。現場で対応が難しければ最終的には編集でなんとかします(笑)。
―その場の雰囲気だったり、ユーモアを重視されるのには何か理由があるのでしょうか?
もともとお笑いが好きで、昔から短編のコントや海外のクスッと笑えるCMなどをよく見ていたんですよね。海外のミュージックビデオにはシニカルなものが多くて惹かれていました。
―それで、『ミステルロココ』でもBrave vibrationをあのような使い方にしたわけですか(笑)。
楽曲のテーマに沿ったストーリーを軸にして、僕なりの表現で肉付けしたらああなりました(笑)。もちろん楽曲とアーティストには敬意を持って臨んでます。
―ある意味、見事に曲にピッタリで驚きました(笑)。土屋アンナさんも「PVをこっちにすればよかった。ウケました」とおっしゃっていたようですね。やはり歌詞に登場する「強さ」「タフさ」といったキーワードからプロレスを発想されたのでしょうか?
最初に楽曲を聴いた時に、女の子の覆面レスラーがリングに向かって歩いて行くイメージが浮かびました。“ロリータ”は、そのタフなイメージとの落差を出すための要素で後付けだったりします。
―プロデューサーの方にはすぐに受け入れられたのでしょうか?(笑)
実を言うと、「プロットを3案欲しい。」と言われたんですが、僕が用意したものが、全て女子プロレスラーものだったので、それ以外を選びようがなかったんですけどね(笑)。Brave vibrationってすごくパワフルな歌だから、普通のシチュエーション、映像では負けちゃうと思ったんですよ。プロデューサーも面白がってくれたしこれ以上にこの楽曲に合う設定はないという自信もありました。
―なるほど!ヒロインの彼氏として猫ひろしさんを起用されたのもユーモアからでしょうか?
猫さんを、他の誰でもなく猫さん役として出したい、というのはこだわりました。あと、ヒロインは小っちゃくて可愛いものを愛するという設定なので、好きな男性も小さいことが前提となったんですよね。特殊な世界観を持った子だから、猫さんをかわいくて魅力的に感じるに違いないと考えました。
あと、現役女子レスラーであり、女優もされてるバンクーバーキャットさんにオファーをしようと思ってたんですが、同じ「ネコ」つながりという点でも面白いかなと思いました。
―日高監督の作品は『Nature calls me(※)』に見られるように、言葉をうまく掛け合わせたものが多いですね。
『Nature calls me』はトリプルミーニングですからね。「自然に呼ばれていく」というそのままの意味、「トイレに行きたい」という意味、そこにさらに、映像では描いていませんが、「最終的に土に還ってしまう」という意味の3つです。普段から、2つ意味を持たせるのは好きなんですけどね。『カミさまもう一度だけ(※)』の「神」と「髪」とか。ショートフィルムってどこにでも仕掛けを入れられるのも魅力で、タイトルで「あぁ、やられた」と思わせるのが好きなんですよ。
―『ミステルロココ』は、各種スマートフォン用にアプリ化もされており、よりアクセスしやすくなっていると思いますが、特にどのような方には絶対観てもらいたいですか?
テーマからして、女性というのは第一にありました。ただ、性別・年齢関係なく誰が観ても元気が出るような作品にしたかったです。
それと、観て欲しいけれど絶対観てくれなそうなのが、昭和プロレス好きの30代以上の男性(笑)。宣伝の段階で全くネタバレをしていないのでまず関心を持たれないでしょうが、山本小鉄さんとか高田延彦さんなど、プロレス好きにはたまらない解説者のモノマネをたくさん入れているんですよ。実際、プロレスファンの僕としては、そこが肝と言えるくらいです(笑)。
今Facebookの『ミステルロココ』のページには約1200人が「いいね」を押してくれているんですが、アイコンを見るとその多くが海外のロリータ女子なんですよ。海外では公開されてないのに、グループページが出来てたり、公式HPへのアクセス数もヨーロッパ、南米、それに中国あたりが日本より断然多かったりして、おもしろい現象ですね。先日英語版のアプリがリリースされたので、海外の方々にもようやく届ける事が出来るのがうれしい反面、反応が怖くもあります。(笑)
―楽曲にインスパイアされてショートフィルムを制作する「ミュージックShort」ですが、通常のPVとは違った全く新しいジャンルについて、他のジャンルにはない魅力や可能性などありましたらお聞かせください。
他ジャンルにはない魅力でいうと、映像作品にとって音はとても重要な要素ですし、実は僕の場合一番悩む部分でもあるんですが、洗練されたプロのミュージシャンの楽曲を自由に使うことができるのは作り手としてうれしいですね。
それから楽曲のプロモーションが目的のいわゆる「PV」では決して出来ないような、「ミュージックShort」ならではの表現を探るのが大きな魅力の一つだと思います。
ロココでは、その指針となるものということでしたので、歌詞のフレーズを各チャプターのタイトルに使用したり、
「こういう方法もあるよね」というのをクリエイターの方々に提示できればという思いもありました。
映画祭の応募作品を鑑賞してるとまだクリエイターが楽曲に遠慮してるというか寄り添い過ぎてて、PVの域を出てない作品が多いなという印象です。もっとクリエイターが楽曲とがっぷり四つに組んでガチンコバトルしてるような作品を見てみたいですね。
―先程、海外のCMやコントに惹かれたとありましたが、映画の中で特に印象に残った作品は何ですか?
初めて映画というものに興味を持ったのは『ローマの休日』でしたね。それまでは学校の授業で見せられる教育用映画ぐらいしか見たことがなかったので、それは衝撃でした。僕の撮る作品に「ハッピーエンドじゃない」ものが多いのは、刷り込みとしてこの『ローマの休日』の影響があるんだと思います。
―なるほど。常に撮りたいテーマを候補として持っていらっしゃるとのことでしたが、今やりたいテーマはありますか?
企画であたためているのは5つくらいありますね。その一つは“モキュメンタリー”というジャンルで、いわゆるフェイクのドキュメンタリーです。フジテレビで、映画化もされた『放送禁止』という深夜番組があったんですが、その番組内では、ドキュメンタリーとして撮ったけれどもあまりに問題あるから放送禁止になっていたのを再構成して蔵出ししましたよ、という体で過激な映像を流すんです。その、一見ドキュメンタリーなのか作り物なのか分からないきわどいラインを狙ってみたくて。
例えば某国営放送でこれをやったら相当面白いという企画を持っています。実現したいのでここでは伏せますが。
―番組の幅が広がりそうですね!他の案もお聞かせ頂くことは出来ますか?
あとヒーローものもやってみたかったですね。実は、松本人志さんの『大日本人』の前に練っていた企画で、あの映画の最後にやるヒーローの座談会のようなもの、あれをやりたかったんですよ。リアルに存在するヒーローたちが、その日の仕事を終えて居酒屋で繰り広げている会話劇を盗撮する、その脇では元ショッカーで引退したオヤジが偉そうに呑んでいる、みたいなのを全部で12話(1クール分)作ったんですよ。今でも面白いとは思うんですが、最近ご当地ヒーローも流行ってるし、ヒーローものみんなやっているよなという状況なので、もう少しタイミングを見計らって出したいなと考えています。
―12話とは、また大量に用意してあったのですね。
―日高監督の次から次へ溢れるインスピレーションは、どのようにして得られるのでしょうか?
別にそんなに作ってるわけではないですが(汗)。美術館で見たインスタレーション(※)、それに『放送禁止』のようなテレビ番組もそうですが、そうしたものを観る際に常に、「フォーマットは利用しつつ、何か別の企画を当てて新たな作品に転換出来ないか?」と考えるのは好きですね。
最近観たビデオ・インスタレーション(※)としては、街角で会話をしている二人の女性の下に、一人合流してくるだけの15秒程度の話なんですが、それをスーパースローモーションで20分に引き延ばしてあるんですね。ただその際、女性の表情の変化が異常で、始めは殺人鬼みたいなものすごい形相をしているんですが、それが次第に驚きに変わり、最終的に嬉しい表情になるというものなんです。本当に喜んでいる何気ない一動作なのに、ある瞬間だけを切り抜くと怒った表情に見えるというのが魅力的で、僕も10秒程度の出来事を3分くらいに延ばし、いろんなシチュエーションで撮影してみたいなと思っています。
―ではあらためて、ショートフィルム制作の醍醐味を教えて下さい。
作り手としてのメリットはすごく大きいですね。『キャラウェイ』では温水洋一さんにも出演して頂いたんですが、とても多忙な方で、でも5時間だけならお時間を頂けるということで、撮影できました。こういうのって長編だとあり得ないですよね。あとは、ワンアイディアあれば作品にできる、またリスクが少なく”実験”が出来てしまうこと、それに伝えたいメッセージ・注目してもらいたい事柄にスポットを当てやすいことがありますね。
―最後に、これからショートフィルムを作ろうとしている人に対して、アドバイスや応援メッセージをお願いします。
映画を作りたいと思える時点で幸せですし、衝動の赴くままとにかく撮って下さい(笑)。でもって、youtubeなどで公開し、コメントをもらいましょう。作品が評価されない時、大抵は「観る人が分かっていない」と考えがちなんですが、違うんですよね。言いたいことが「伝えられていない」のが原因なんです。結構プロの方もチェックしていたりして、真剣に作ってコメントを求めた場合は、辛辣なダメ出しというよ
り適確な指摘をもらえることがありますね。あとは親のような年の離れた人に見せて理解されるか確認するのも良いでしょうね。『ミステルロココ』は「なんだ、これは」という反応になるかもしれませんね(笑)。それら指摘を正面から受け止めることが大事だと思います。
あと、大学に行きながら映画学校に通う人もいるようですが、教えてもらおうっていう姿勢の人は伸びないので、主体的にアクションを起こして欲しいと思います。
―本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
日高監督も過去に2度ノミネートを果たしている「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」は現在、2012年度作品を公募中。締切は2012年1月16日(月)となっているので、興味のある人は年末年始を利用してすぐにでも制作・応募してみてはいかがだろうか。
「とにかく撮って評価を受けるべき」という日高監督の言葉を信じて。
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 作品募集特設サイト
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【ミュージックShort部門】
Superfly、土屋アンナ、たむらぱん、クラムボンなど160曲以上ものエントリーから好きな楽曲を選び、自由に映像作品を作れる新感覚プロジェクト!
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