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Case 7
■50年続く「海の家」の舞台裏(1)



■地元の住民に愛され今年で50年周年を迎える「海の家」

広告学研究会は毎年夏に、神奈川県の葉山海岸で海の家(キャンプストア)を運営している。名物企画だ。けれどもこの企画が、建物の建設から全て彼らの手作りで行われているということをご存知だろうか?実は毎年5月中旬から毎週末、彼らは泊まりがけで建設に励んでいるのだ。今年で広告学研究会のキャンプストアは50年を迎える。例年に増して気合いが入っているキャンプストアの建設・通称「ドカチン」に慶應ジャーナル編集部が潜入し、華やかな海の家の舞台側に迫る。


 
キャンプストアが設置される葉山海岸 (逗子駅からバスで15分程度)

■何もない砂浜に自分達の力で海の家を作り上げる!






この日の葉山の空は青く、浜は海水浴を楽しみに来た地元住民でにぎわっていた。地元住民に混ざり、暑い中真剣に店の骨組みを組み立てる広研部員たち。キャンプストア副店長の平岡大典さん(商学部3年)にお話をうかがった。



KJ:今年でキャンプストアを組み立てるのは3年目、建設のリーダーでもある平岡さん。どんなことに気を使っていますか?

平岡「気にしているのは怪我のこと、天気のこと、進行状況ですね。天気が心配で、雨が降る夢を見たこともありました。雨が降ると、作業の進行状況に影響が出るので。あと、特に怪我の危険は常にあって、ノコギリを使うと絶対誰かが切ってしまうんです。だから、休憩は休憩。『作業中止!』と言ってメリハリをつけます。2年生には、『1年生をみてて』と言っています。」

KJ:毎週葉山に来て作業するのは大変じゃないですか?

平岡「確かに大変ですね。でも、それよりも楽しい気持ちの方が大きい。キャンプストアをやってると、1年経つたびに自分が成長します。時間やゴミの分別に気を使うし、人とのつながりも強くなる。仲間同士で『お疲れ様』を言い合うし、地元住民の方への挨拶も欠かさない。合宿所を貸していただいたりしてお世話になっているので。隣の海の方にも挨拶します。僕は葉山がすごく好きです。」



KJ:今年のキャンプストア、ここを見てほしい!というポイントはありますか?

平岡「今年は屋根の向きが今までと逆なんです。49年間同じだったものを反対にしたんですよ。屋根の上には藁を敷いて、コンセプトは南国風バンガローです。」

この日、まだ屋根は板を打ち付けたばかりの状態。健康的な笑顔で語る平岡さんのお話を聞き、完成を見るのが待ち遠しくなった。

■キャンプストアは,Camp(生活)+Store(店の経営)である。

キャンプストアという言葉からわかるように、彼らの活動の軸はCamp面(生活)とStore面(店の経営)の二つである。浜から数分歩いた場所に、彼らが夏の間生活する合宿所がある。今回は特別に合宿所に案内していただき、4分以内で上がらなければならないという規則のあるお風呂、役員の女子だけが入ることのできる屋根裏部屋など知られざる部分を見学。合宿所長の森田和頼さん(文学部3年)にここでの生活の魅力を語ってもらった。

  









左:合宿所
中:女子役員だけが入るのが許される裏部屋
右:男専用水シャワー

■ボロボロの合宿所での共同生活で、夏を満喫する!

KJ:合宿所長というのはどんな仕事をするんですか?

森田「家主みたいなもので、店を回している間、僕が一人で合宿所にいます。3年の他の役員はみんな海にいるから、合宿所は家で、海は役員にとってはバイト先みたいなものですね。合宿所長という仕事は、他の12人の役員にはない魅力があるんですよ。1、2年生と接する機会が多いから」



KJ:(貼り出してある規則のポスターを見て)規則が厳しいんですね!

森田「厳しいです。しかも宿はボロボロ。(笑)だけど、こわいもの見たさで病みつきになります。規則の中に、オーディオ機器の持ち込み禁止があります。それは日常と切り離すためで、非日常であるキャンプストアを楽しむということなんです。そうやって一緒に生活していくうちに、みんなで盛り上がれるゲームを自分たちで考えちゃったりして、お互いの名前を覚えて、班(注:1,2年生で6つの班に分かれる。1班30人)を越えての交流ができる。さらに、班は班で感情をぶつけ合うから、真の意味での友達ができます。こういう場にはまる人たちとは本当に熱い時間が過ごせますね。」

KJ:じゃあ、キャンプストアの終わる頃は本当に寂しくなりますね。

森田「そうですね。ここでの生活は夢のような生活で、終わることをあんまり考えてないです。来年は僕達3年はもう来ないから、ここで頑張らなかったら後悔する。だから頑張っています。キャンプストアが終わると、部員それぞれが成長していると思います。」

優しい口調で話す森田さんは、キャンプストアの家主そのものだった。
50周年を迎える今年は、特別な夏になりそうだ。



■キャンプストア(Campstore)
慶應大学広告学研究会の経営する「海の家」
葉山海岸で毎年7月〜8月にかけて営業される。
営業期間内は、様々なイベントが開催予定で、今年もモーニング娘。研究会のイベントや松沢神奈川県知事を呼んだシンポジウムなどが企画されている。

■慶應大学広告学研究会
「キャンプストア」や「ミス慶應コンテスト」,「三田広研」などを主催する部員数300名を超える大規模学生団体。
http://www.keioad.com/


取材   瀧宮瑤子
 猪狩祥平
 吉川英徳



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